現役探偵が考える今後の共同親権

目次

共同親権とは、離婚後も子どもの父母双方が親権を持っていることをいいます。

これにより、子どもは離婚後も父母との関係を維持しやすくなり、子どもと離れて暮らす親が子育てに積極的に関われると考えられています。

これまで、父母が離婚した場合は必ず「単独親権」(父母の片方のみが親権を持つこと)となり、共同で親権を持つことは認められませんでした。

しかし、2024年5月17日に「共同親権」に関する改正民法が参議院本会議で可決され、2026年の施行に向けて、進んでいます。

実は、当社・アヴァンドリサーチでも、親権に係る相談は年々増えております。

その背景として、秋田県の相対離婚率(出された婚姻届の件数に対する離婚届の割合)は約40%と、全国で8番目に高い数字となっていることが挙げられます。

今回は、話題の共同親権について、具体的な内容やメリット・デメリットなどを、現役探偵の目線から分かりやすく解説いたします。

共同親権と単独親権の相違点

単独親権と共同親権との違いは、親権を父母の双方が持つのか、片方のみが持つのか、という違いになります。

これまでは単独親権のみが認められていたのですが、今回の法改正により、離婚後は単独親権か共同親権かを父母の協議により選択ができるようになります。(改正民法819条1項)また、父母間協議が難しい場合は、裁判所が単独親権か共同親権かを決定します。(改正民法819条2項)

参考:法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について

裁判所の判断とは

単独親権のみが認められている現状では、母親が親権を持つケースが多いです。今後、父親が共同親権を希望しているが、母親側がそれに応じない場合が増えるのではないかと考えられます。

それでは、そのような場合、裁判所はどのような判断をするのでしょうか?

前提として、裁判所は「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」と示しております。つまり、子どもにとってプラスとなる判断をするということです。

具体的に、次のいずれかに該当し、共同親権によって子の利益を害すると認められるときは、単独親権と判断されます。

①父親又は母親が子の心身に害悪を及ぼす恐れがあると認められるとき
②父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける恐れの有無、父母の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
参考:e-GOV  法令検索 「改正民法819条7項

したがって、以下のような場合は母親の単独親権が認められることが多いです。

・父親が子どもを虐待している
・父親が母親に対してDVを行っている
・母親の方が監護者としてふさわしく、父母が共同して親権を行うことが困難

確実に単独親権をとりたい場合、証拠の提出が必要なケースもあり、探偵の果たす役割も引き続きあると思います。

共同親権制度には問題点も指摘されているため、今後も世論や裁判所の判断を注視していく必要があるでしょう。

共同親権によってできること

共同親権を選んだ場合、子どもと離れて暮らす親権者でも、日常生活における様々な判断・行動が可能です。子供の受験、転校、パスポートの取得、手術といった重大な事柄については、双方の合意が必要になるため、意見を述べたり、関与したりすることができます。具体的には、下記のようなことが認められます。

・重要な事項:受験、転校、パスポートの取得 → 両親の合意が必要
・日常の行為:食事、買い物、習い事 → 単独で判断可能
・急迫の事情:緊急手術 → 単独で判断可能

この改正によって、離婚後、父母どちらもが子どもの養育に関与する機会が増え、継続的に支援や愛情を与えることが可能となります。

共同親権のメリットとデメリット

共同親権が施行されるにあたってメリットだけではなく、様々なデメリットも考えられます。探偵目線でどのようなことが起こり得るのか考えてみます。

メリット

・親子関係の維持と強化
・養育費の支払い促進
・離婚時の親権トラブル回避

父母が共同で子どもを養育しますので、親子関係が継続的に維持されることはメリットといえます。特にDVや暴力といった事由でない離婚の場合は、子どもの成長に良い影響を与える可能性も大いに考えられます。

また、親子の関係が維持されることにより交流の機会や進路選択等へのかかわりを持てるため、養育費の支払い意欲の低下を防げます。

また共同で親権を持てることにより、離婚時の親権争いが避けられます。

デメリット

・父母間の対立
・子どもに与える負担
・虐待やDVの継続

共同親権では、父母がどのように子育てに関わるかは基本的に父母の協議によって決めることができるとされていますが、そもそも夫婦が「共同」できない関係だからこそ離婚に至った可能性も否めません。父母の合意が必要とされる案件を「共同」で決められるのかは疑問が残ります。

例えば「価値観の違い」で離婚した父母が、共同親権制度により子どもに良い影響を与えることができるか? これについては、絶対とは言えないと思います。さらに、面会交流が増える中で子どもの生活や精神が不安定になる恐れもあります。

そしてこの共同親権制度における最大の懸念点が、虐待やDVが継続される恐れがあることです。
虐待やDVの証拠等がなく、共同親権が認められた場合、子どもや元配偶者にとって最悪のケースに陥ることも考えられます。

アヴァンドリサーチでも、DVに関して様々な事案を見てきました。虐待やDVを受けている被害者のなかには、加害者に逆らえず声をあげられない人もいます。

共同親権は、誰が誰のために改定した法律なのか? 誰にとって幸せに生きるための手段なのか?
あくまでも探偵目線ですが、現状の共同親権制度には小さな落とし穴がいくつもあるような気がしてなりません。

まとめ

今回は「共同親権制度」について解説しました。

現行の単独親権制度が定められたのは1947年なので、77年ぶりに離婚後の親権の在りかたが見直されました。

これは、親権や離婚問題の歴史上、とても大きいことだと思います。

しかし、中身を考えていくと、「持続可能な社会」、「多様性を尊重する社会」このような文言に後押しされて、急いで改定されたように思えてなりません。起こり得る様々なケースを想定して改定されたとは思えないのが現状です。

「共同親権制度」は2年以内に施行されることが決まっているため、このまま進むと2026年5月までには新しい親権制度に移行します。

また、附則では施行後は5年を目途に制度や支援策を再検討するとされています。

アヴァンドリサーチでは今後も「共同親権制度」を注視し、探偵ができることとは何かを考えてまいります。

最後に

冒頭で秋田県の相対離婚率は約40%となっており、全国では8番目に高い数字と述べました。参考までに東京都の場合は、離婚率は26.4%となっております。

アヴァンドリサーチにおいての案件数のトップは「浮気調査」なのですが、この浮気調査の先にあるのが離婚問題(慰謝料請求)であり、親権問題とも深く関わっています。
いずれにしても、証拠の有無が離婚・親権問題解決の鍵になるのは間違いありません。

無料相談も随時行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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